アトピーのお風呂はどうしたらいい?
答え:「なるべく入浴(シャワー)頻度は減らし、時間も短時間にしましょう」
アトピー性皮膚炎の標準治療の観点からは
「身体が汚れたらその都度お風呂に入り、その都度保湿剤で保湿を行う」
という指導を受けることが一般的かと思いますが、特にその入浴法で皮膚コンディションが変化してこない場合には「入浴回数を減らす」ようにしましょう。
そしてたまにの入浴の後は「保湿剤も使用しない」ことが理想です。
その理由を記していきます。
下のイラストは、正常な皮膚の断面図になります。
イラスト上部に「皮脂膜」と表記された層がありますがこの皮脂膜は、汗・垢・皮脂・分泌型の免疫グロブリンAなどから構成されています。
分泌型免疫グロブリンAには、皮膚表層で細菌や真菌群等の微生物の影響から皮膚を守る役割があり、皮膚のバリア機能を担っています。
長時間/頻回の入浴、また身体をしっかり洗うという行為は、これら皮脂膜を洗い流すことになってしまい、抗菌/保湿の天然バリア機能を弱めてしまうのです。
ゆえに、入浴回数を控えるようにすると天然バリア機能が不必要に失われなくなり肌が回復するのに好ましい条件が整ってくることになります。
汗や垢と聞くと〝汚い〟とか〝老廃物〟というイメージから(綺麗にしなくてはいけない)という思考になりやすいですが、アトピーの方にとってはバリア機能の回復の方が優先されるべきことであるのは間違いありません。
毎日の入浴が庶民的習慣となったのは江戸時代以降からだと言われていますが、それ以前は毎日お風呂へ入る習慣すら無かったわけです。
「時代が違う」と言われてしまえばそれまでですが、当時よりもよほど衛生環境や清潔事情に優れた現代の方がアトピー性皮膚炎は拡がりを見せています。
清潔なのは気持ちの良いことですし否定するものではありませんが、過度な清潔志向には注意したいものです。
私たちの身体から分泌される皮脂には、水分の蒸散を防ぎ皮膚の潤いを守る働きがありますし、汗には体の熱を下げる働きと皮膚表面に水分を巡らせ保湿をするという働きがあります。
汗や皮脂は本来運動を行うことなどで分泌されますが、保湿剤(クリーム)を使用しているとその分泌能が抑えつけられてしまうことがあるのです。
お風呂後に限らず、1日を通して保湿剤を使用しないことが身体の持つ天然の保湿潤い能力を取り戻すために大事なことになってきます。
丁寧に天然の保湿/潤い成分を洗い落とした後に保湿剤を身体に塗り続ける毎日が、果たしてアトピー性皮膚炎で悩むあなたにとって好ましい状況なのかどうかご判断ください。
天然のバリア機能を維持することが入浴回数を減らすことの目的です。
とはいえ、絶対に入るなといっているわけではありません。状況によっては入らざるをえないようなこともあるでしょう。
アトピーの方の入浴法には以下のようなコツがあります。
- 長湯をしない(長くても10分)
- 熱過ぎる温度にならないようにする
- 石鹸、シャンプー、ボディソープ類は使わない
- 手の平で優しく洗う
以上のようなことに気をつけましょう。
それぞれ簡単に説明していきます。
①:長湯をしない(長くても10分)
長く湯船に浸かっていると天然の皮膚バリア成分である皮脂が必要以上に流れ(溶け)落ちてしまいます。
また、10分程度湯船に浸かっていれば落とすべき身体の汚れは流れると言われており、身体を強く洗って欲しくないアトピーの方には湯船に浸かるだけで済ませてもらうのも1つの方法です。
②:熱過ぎる温度にならないようにする
熱過ぎる温度と言っても個人差がありますよね。当院では理想的な湯温の幅は38〜40℃、41℃以上を熱い温度としています。
10分程度浸かった段階で、額にじんわりと汗をかく程度の入浴をしていただけると良いです
熱すぎるお湯は自律神経バランスを乱し、入浴後の痒みの増強の原因となってしまうことがあります。
③:石鹸、シャンプー、ボディソープは使わない
こういった洗浄製品は、洗浄力が強く皮脂膜を必要以上に洗い流してしまいます。
界面活性剤を含まないものや、添加物の無い天然成分由来の製品を使われるのも一つの方法です。
お湯による洗浄では満足できない場合は、自分の肌に合ったものを見つけられるのが良いですが、
刺激の少ないものであっても用いるのは脇、陰部、髪の毛の生え際、鼻の際、手足など、皮脂が分泌されやすい場所に限定しておくのが良いです。
④:手の平で優しく洗う
お湯+手の平で優しく体を洗えればベストです。
様々な素材のボディタオルやブラシなどがありますが、もうおわかりのように皮膚のバリア機能を壊してしまう可能性が高まります。
自らの手で優しくこすってあげれば汚れは十分落ちますし、10分の入浴と組み合わせることで洗浄力はより高まります。
このような方はお風呂に+αの注意が必要です
- 水やお湯そのものに過敏反応やアレルギーが出てしまう
- 塩素に対して過敏反応やアレルギーが出てしまう
- 湿度が高いと調子が悪くなってしまう。
- 浴用洗剤の臭い等、化学物質との接触で調子が悪くなってしまう 等
程度の差こそあれ、上記のようなお風呂環境そのものに過敏反応を起こしてしまう方が少なからずいらっしゃいます。
入浴をこういった理由で避けざるを得ない方の場合は、先にこれらの問題を克服した方が良いと考えます。当院で受けられるアラテックセラピーの得意とするところですのでお気軽にご相談ください。